切ないほどに聞こえてくる「ムンク展―共鳴する魂の叫び」
東京・上野の東京都美術館で開催されている「ムンク展―共鳴する魂の叫び」展を鑑賞してきました。
ムンクと聞けば、誰でもあの《叫び》のポーズを思い浮かべられると思いますが、ムンクの生涯をたどりながら観ていくと単に独創的というだけでなく、切ないほどの魂の叫びが聞こえてくるようです。
現存する《叫び》は4点
ムンクの叫びには4つのバージョンがあり、今回出品されているのはテンペラ・油彩画です。
こんなにバージョンがあるなんて知りませんでした。
よくよく見ると、色も線も表情もみんな違うんですね。
なぜこんなに種類があるかというと、個々の作品をまとめて一つの作品として見せる効果に気づき、1点でも成立すると同時に、並べ替えるたびに異なる意味が生じる完成のない作品を意識するようになったのだとか。
なるほど《叫び》以外にも同じモチーフを技法を変えながら繰り返し制作された絵画がたくさんあるなと感じます。
ムンクの生涯
ムンクが5歳の時母が結核で亡くなり、その後姉のソフィエが同じく結核でこの世を去りました。
17歳で画家を志し王立美術工芸学校に入学。様々な芸術家たちと交際する中で、不倫の恋も経験します。
パリ留学中に父親がなくなり、自身の個展が1週間で閉鎖されるという挫折感を味わいます。
35歳の時に富豪の娘トゥーラ・ラーシェンと知り合いますが、結婚話のもつれからピストルが暴発。
ムンクは左手中指の先を失ってしまうのです。
ついに、ムンクは神経衰弱のため病院に入院することとなります。
《叫び》を描いている時期に、ムンクの妹はある収容所に入院させられていたそうです。一説では躁鬱病の患者だったとい言われています。
ムンクの生涯をたどりながら絵を鑑賞していると、母や姉の死、恋愛経験を通して人間の“生”と“死”、“不安”や“恐怖”といった感情が切ないほどに聞こえてくるようです。
心に伝わる絵を描きたい
ムンクはこんなことを言っています。
「私は見えるものを描くのではない。見たものを描くのだ」
壁に掛けて眺める絵を描くのではなく、感動する、心に伝わる絵を描きたいという言葉。
とても心に響きます。
ムンクのように自身を貫く叫びのような体験はないけれど、自分が何のために生きているのか、だれに何を伝えたいのかを考えさせられる展覧会でした。
ぜひ、出かけてみてくださいね。
2018年10月27日(土)~2019年1月20日(日) 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで) 前売り券 | 一般 1,400円 、当日券 | 一般 1,600円